世界を知る対談 大里洋吉 × 寺島実郎

2013/09/25

 
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大里 洋吉 氏

株式会社アミューズ
代表取締役会長




 第9回、第10回放送は、エンターテインメントビジネス界をリードする株式会社アミューズ代表取締役会長の大里洋吉氏をゲストにお迎えしました。
 

大里氏の人間としての魅力
 対談は、大里氏の幼少時代の話から始まりました。熱狂的な映画少年だった大里氏は、東京での大学生活も映画館に立ち寄らない日はなく、映画がなければ今の自分はないと回想しました。寺島は、大学生の大里氏が、学生運動の全盛期の中で政治的に冷めたいわゆる「ノンポリ」学生であった点に関心を示しました。
 大里氏は、映画製作への夢から渡辺プロダクションに入社、キャンディーズに代表される著名アーティストのマネジメントに携わりました。そして独立後は、サザンオールスターズや福山雅治など数多くのアーティストを世に送り出しました。有名アーティストの知られざるエピソードを紹介する大里氏の話に対談会場は大いに盛り上がりました。
 このように華やかな世界で成功を収めた大里氏ですが、常に自分が恵まれた環境にあり、多くの人からの支援があったとの感謝を忘れた時がありません。寺島は、大里氏には「この人を支えたい」と周囲の人を動かす「人間としての魅力」に着目し、成功する人の特徴であると語りました。
次に寺島は、人生で影響を受けた体験や人物を尋ねました。すると大里氏は、渡辺プロダクションでの体験と、当時の副社長・渡邊美佐氏の名前を挙げ、若い時期に海外経験の機会を与えられ、外国でエンターテインメントビジネスのスケールに驚愕したことで、人生が大きく変わったと答えました。そして大里氏と寺島は、ミュージカルや俳優についての話題で大いに盛り上がりました。
 
クリエイターとしての大里氏
 寺島は、大里氏が手掛けるプロジェクトで、まずは浅草での試みに注目しました。かつて多くの劇場が立ち並び大衆芸能の街として賑わった「浅草六区」を、新たなエンターテインメントの場とすべく、大里氏は常設劇場をつくり、大里氏自身が現役クリエイターとしてメンバーとともに舞台を創り、昭和歌謡のレヴューを上演しています。
 この試みは、大里氏の問題意識が反映されています。従来のビジネスモデルはアーティスト個人の知名度を軸にしていますが、果たしてこのまま継続できるものかという疑問です。そこで、ブロードウェイのミュージカルのように、コンテンツの魅力で集客し、いつでもそれを楽しむことができる場の創出に挑戦しているのです。また、古き良き昭和の時代に触れる「エデュテインメント(エデュケーション+エンターテインメント)」としての性格を持たせようとしています。寺島は、多くの人々を引き寄せる新たな磁場を創出しようとする大里氏の試みは、社会的にも大きな意味があると強い関心を示しました。
 
アミューズミュージアム
 さらに大里氏は、日本の伝統文化を紹介する美術館として、同じ浅草にアミューズミュージアムを設立しました。若い芸術家にチャンスを提供する場でもあるこの美術館には、大里氏の想いが込められた「BORO」というコーナーがあります。それは、200年前の農民が実際に着ていた「ぼろ」と呼ばれるつぎはぎだらけの服の展示です。その目的は、豊かな生活の中で忘れ去られる日本人の原点にスポットライトを当てようとするものです。
日本人は、わずか70年前までは、貧しい生活をしつつ、幾度も戦争に向かいました。こうした日本の歴史を理解しなければ不遜な人間になってしまうと、大里氏は学生たちに想いを伝えました。
 
ライブビューイング
 次に寺島が注目したプロジェクトがライブビューイングです。例えば、ニューヨークのマディソンスクエアガーデンにおけるL'Arc~en~CielコンサートやシンガポールのPerfumeコンサートが日本全国の映画館でライブ中継されました。ITの活用により、収容人数という物理的制約がある従来型コンサートの限界を突破して新しいモデルを創出し、さらにはライブ会場の一体感を醸成することに成功したのです。
 
ミュージカル劇場
 そして、大里氏が新たに手掛けようとしているのがミュージカル劇場です。背景には、若い世代の減少で日本の音楽市場が縮小していく懸念があります。しかしアジアには、これから大きなマーケットとなる国や地域は数多くあり、そこにミュージカルやミュージカル映画を供給していくことでエンターテインメントビジネスを複合的に盛り上げることは十分に可能です。
しかし、国を挙げてエンターテインメント産業を後押ししている韓国と比べると、日本は特にミュージカルでは大きく後れを取っています。そこで大里氏は、若年層が気軽に楽しめるオフブロードウェイのような劇場の創出によって日本人のレベルアップを図ろうと試みているのです。

 
国境を超えるエンターテイメント 
寺島は、大里氏との対談を通じて、多くのプロジェクトから利益追求を超えたメッセージを感じました。この点を大里氏に尋ねると、世界でも高レベルの日本音楽を世界に発信する情熱と、エンターテインメントに携わる人間として政治的軋轢や国境の壁を超えたグローバリゼーションを志向していく気概を熱く語りました。寺島は、徹底的に政治と距離を置いていた大里氏が、エンターテインメント業界を生きる中で政治の本質を見抜いているとして、こうした人間の存在こそが一国の政治レベルを高めると指摘しました。

若者へのメッセージ
 大里氏は、世界を相手に仕事をするならば、必ず相手の立場を知らなければならないとして、周辺国との軋轢の背景にある歴史を謙虚に学ばず、モノだけを売ろうとすれば必ずしっぺ返しを食らうと語りました。寺島は、いかなる仕事に就こうとも、アジアのダイナミズムと向き合う必要があるとして、時代の変化から目を逸らさず、自分の判断で行動する力を養う努力を惜しむべきではないと言い添えました。
最後に学生から、エンターテインメント業界と社会貢献の関係について質問がありました。大里氏は、オリビア・ニュートン・ジョンの言葉「影響力のある人間はそれを正しく行使する義務がある」に感銘を受けたことを紹介し、質問への答えとしました。
 
 
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 大里 洋吉(おおさと ようきち) 


昭和21(1946)8月22日生 青森県青森市出身
立教大学文学部英米文学科卒業
昭和44(1969)年4月 株式会社渡辺プロダクション入社
昭和53(1978)年10月 株式会社アミューズ設立、代表取締役社長就任
昭和56(1981)年11月 当社代表取締役会長就任
平成20(2008)年6月 当社相談役名誉会長 兼 アミューズ総合研究所“Skhole”主任研究員就任
平成21(2009)年6月 当社最高顧問 兼 アミューズ総合研究所“Skhole”代表就任
平成21(2009)年7月 株式会社アミューズ エデュテインメント代表取締役社長就任
平成23(2011)年6月 株式会社ライブ・ビューイング・ジャパン代表取締役社長就任
平成23(2011)年6月 当社代表取締役会長就任 (現任)
平成24(2013)年6月 株式会社 ライブ・ビューイング・ジャパン代表取締役会長就任(現任)
平成24(2013)年6月 株式会社アミューズ エデュテインメント取締役会長就任(現任)


1946年生まれ。立教大学英米文学科卒業後、69年株式会社渡辺プロダクション入社。
キャンディーズなどのマネージメントを手掛ける。77年同社退社後、渡米。
帰国後、78年株式会社アミューズを設立、代表取締役社長就任。81年代表取締役会長就任。
サザンオールスターズほか数々のアーティストのマネージメント、スター作りのプロフェッショナルとして、総合エンターテインメントプロダクション・アミューズグループを牽引してきた。
2008年6月相談役名誉会長就任。同時に、新たに設立したアミューズ総合研究所“Skhole”主任研究員に就任。
2009年6月最高顧問兼アミューズ総合研究所“Skhole”代表 就任。
2009年7月にアクティブシニア層向けのマーケットを開拓するために設立した新会社 株式会社アミューズ エデュテインメント代表取締役社長に就任し、同年11月には東京・浅草にアミューズ ミュージアムを開館。
2010年12月には、昭和歌謡をモチーフとしたレヴュー「浅草レヴュー劇団虎姫一座」の公演を自ら企画・演出。同公演は好評を博し、2011年9月に第2弾の演目も加わり、ロングラン公演となっている。(現在も上演中)
2011年6月には、コンサート中継などを衛星や光回線を介して映画館などで上映するODS(Online Digital Source)事業に取り組む新会社 ライブ・ビューイング・ジャパンの代表取締役社長に就任。
同年同月、アミューズグループの更なる発展のため、再び株式会社アミューズ代表取締役会長に就任。
2013年4月には日本初となるアジアの良質な作品を上演するミュージカル専用劇場「アミューズ・ミュージカルシアター」を六本木にオープン。韓国・大学路(テハンノ)発の多彩な作品を次々と上演している。
また、2014年12月開業予定の東京・浅草「マルハン松竹六区タワー」にオープンする二つの劇場で上演されるコンテンツのゼネラルプロデューサーへの就任も決まっている。現在も、豊富な経験や人脈を活かし、エンターテインメント業界全体の発展のため、様々な事業に積極的に取り組んでいる。

就職を機に世界と人生を考える! BS寺島 月9トーク(BS12 TwellV)
第9回、第10回放送(2013年2月25日、3月4日)より


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