寺島実郎の世界観 第10回 「IT革命とは何だったのか」

2013/07/09

 「就職を機に世界と人生を考える!BS寺島月9トーク」内の「寺島実郎の世界観—今知っておくべきメガトレンド」のコーナーで寺島が語った内容をご紹介します。第10回テーマは「IT革命とは何だったのか」です。
 
201307092141_1-300x0.png


 
 IT革命とは一体何だったのか。我々は、生活の隅々まで情報技術革命、情報技術ネットワーク革命が浸透してきている時代を生きています。そこで、原点に立ち返ってIT革命とは何だったのかということをまず踏み固めることが、その後の次世代IT・ICTを考える上でも非常に重要だろうと思います。

 誰もが知っている「2001年宇宙の旅」という作品があります。1968年に映画と並走して小説になり、世の中に出てきました。実は「2001年宇宙の旅」はおもしろいプロットになっており、人工頭脳コンピューター・HAL9000が1992年に完成することから宇宙の旅が可能になるという物語です。しかし、技術が非常に高度化していますが未だに人工頭脳コンピューターは完成していないといってよいと思います。
 それでは、人間の情報科学技術の進化が遅れているのかというと、そうではないのです。大容量の人工頭脳コンピューターの方向に開発が向かわなかった、そして分散系・開放系ネットワーク技術に情報科学技術の進化が向かったと言えると思います。それがインターネットの登場です。
 
 1962年、今から50年以上も前に米国防総省(ペンタゴン)が米シンクタンク・ランドコーポレーションのポール・バランという研究者に委託し、今日我々がインターネットと呼んでいるパケット交換方式情報ネットワーク技術の研究開発をスタートさせました。いくら人工頭脳コンピューターのように高度化し、中央制御のコンピューターを肥大化させても、冷戦時代の当時、ソ連から核攻撃を受けて中央コンピューターが遮断してしまったのでは全ての防衛システムが動かなくなってしまうため、ひとつの回路が攻撃で遮断されても柔らかく情報が伝わる仕組みを作っておく必要があるという要請から、分散系・開放系情報ネットワーク技術と呼ばれる今日のインターネットの基盤技術が研究開発されることになったのです。

 1962年にスタートした研究開発により、1969年に米国防総省の情報ネットワークシステムとしてアーパネット(ARPAnet:Advanced Research Projects Agency Network)が完成しました。これが冷戦時代のアメリカを支える情報ネットワーク技術として有効に機能したのです。1980年代末になって冷戦が終結の方向に近づき、1989年にベルリンの壁崩壊、91年にソ連が崩壊して、軍事目的で開発した情報ネットワーク技術をこれからは民生用に活用していこうという流れが起こりました。思い出すと懐かしい1993年です。アーパネットの技術基盤が開放されて商業ネットワークとリンクし、我々の前にインターネットという世界が見え始めたのはこの頃です。
 IT革命とは一体何だったのか。冷戦期にアメリカが開発した軍事技術の民生転換(軍民転換:Defense conversion)のシンボルとして動き出したのがインターネットの登場で、このことがIT革命の基本的性格として深く横たわっています。
 
 それから約20年が経ち、ユビキタスという言葉が使われるぐらいにインターネットは我々の生活基盤の中に深く入りこんできています。そういう中で、皆さん自身が日常的にこれとリンクして生活し、我々の回りをしっかりと取り囲むような形でネットワーク型の社会ができあがっています。
 今後エネルギーをより効率的に使うシステムとして最近よく言われるスマートグリッド(次世代双方向送電網)についても、情報ネットワーク技術を基盤にして作り上げていく必要があります。今後情報の流通コストは、限りなく安くなっていくと思います。新しいビジネスモデルがこれを基盤にして雨後のタケノコのように次々と出てくると思います。要するにネットワーク化の時代における情報ネットワーク技術社会は、誰かと繋がる、何かと繋がることによって成り立っていきます。世界はこのネットワークというキーワードの中で大きく変わっていこうとしています。新しい産業についてもITの次世代インパクトに対する視点を持って向き合わなければいけない時代が来ています。ICT(情報通信技術)という表現も最近使われ始めましたが、今やあらゆる物の基盤要素となってきたIT・ICTをいかに使いこなして我々の生活をより効率的に、より豊かにするかという時代に来ています。一方で、あまりに依存してしまうと自分自身の頭で考えるということを放棄しかねない要素もあります。従って、次世代IT・ICTに向き合う強い問題意識は、自分の頭で考えながら主体的にIT・ICTの基盤を活用することが大切だと申し上げておきたいと思います。
 
 


 
就職を機に世界と人生を考える!BS寺島 月9トーク(BS12 TwellV)
第10回放送(2013年3月4日)より
 


Link