寺島実郎の世界観 第9回 「新しい産業への視界」

2013/06/06

 「就職を機に世界と人生を考える!BS寺島月9トーク」内の「寺島実郎の世界観—今知っておくべきメガトレンド」のコーナーで寺島が語った内容をご紹介します。第9回テーマは「新しい産業への視界」です。
 
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  よくこれからの有望産業、成長産業は何ですかという質問を受けたりします。そのような分野で自分のビジネスモデルをつくりあげていきたいというのは当然なのですが、私はこの問いに対して歴史の脈絡の中でしっかり考え抜くことが大事だと申し上げておきたいと思います。
 ひとつの考えるヒントとしてお話ししますが、真珠湾攻撃の2年前の1939年、ニューヨークで万国博覧会が行われました。当時、爆発的な話題となり、思いもかけないほど多くの人の関心を惹き付けたのが、実は女性用ナイロン靴下の登場でした。この女性用ナイロン靴下は、デュポンというアメリカの化学会社が作ったのですが、石油化学のシンボルです。つまり、石油から女性用靴下が作れることは、もの凄い衝撃だったのです。
 遡って1859年、ペリーが浦賀にやってきたのが1853年ですが、その6年後にアメリカのペンシルバニア州で油田が発見されました。石油産業の登場です。その後、石油資本なるものが力を付け、試みた大きなチャレンジが実は自動車産業を作り出すことでした。1907年、世界の大量生産車の走りであるT型フォードが生まれたことを知っている方もいると思います。フォード、あるいはGMというアメリカを支える自動車会社、これらをバックアップして育っていったのが石油資本なのです。なぜならば石油の安定的需要先を作るのが石油資本にとっては大変重要な課題で、自動車はガソリン、つまり石油で動くという流れをつくる必要があった。それがアメリカの一大自動車産業を作り出す大きなエネルギー源になったわけです。
 そこで、頭を整理して考えていただきたいのです。ペンシルバニアで油田が発見されたこと、それを梃にアメリカは自動車産業を作り、さらに石油からナイロン靴下を作り出して石油化学の時代を到来させたのです。石油産業、自動車産業、そして石油化学というこの三角形の図式を頭に描かれたら分かります。20世紀はアメリカの世紀だという言い方をよくしてきました。世界に冠たる産業国家にアメリカがのし上がっていったのは、実はこの3つ相関の中からアメリカの産業が大きく花開いたからなのです。そして、突き詰めていけばペンシルバニアで油田が発見されことがきっかけといえます。
 
 そこで、今アメリカにおいてペンシルバニアで油田が発見されたときと同じような高揚感で「シェールガス」という非在来型天然ガスの開発がもの凄い勢いで進んでいます。あるいは、天然ガスの価格が非常に安くなったので、「シェールオイル」という原油の生産がもの凄く進み始めています。このことがアメリカの新しい産業のパラダイムを変えるだろうと容易に想像できると思います。
 
 「シーズ(seeds)」と「ニーズ(needs)」という言葉があります。シーズは、「種」という意味です。新しい産業を考えるときに種になる要素は一体何かということですが、例えば新しい「技術」があります。新しい技術の開発動向がどうなっているのか、それからエネルギーの新しいパラダイムがどういうカタチで動きつつあるのかといった基盤になる要素の変化をシーズといいます。
 そして、ニーズ(needs)は、「世の中の要求すること」がどう変わっていくのかという意味です。例えば、世界の人口は、一昨年(2011年)70億人を越して2050年には90億人を超して行くと予測され、爆発的に増えている状況です。一方、日本の人口は、急速に成熟化に向かって1億2800万人でピークアウトし2050年には1億人を割るだろうと予測されています。そのような人口の構造の変化を背景にして、どのようにニーズが変化していくのかについては、しっかりと注目しておく必要があります。
 
 要するに、時代の変化と共に必要とすること、またそれを支える技術やエネルギーという要素がどのように変わっていくのかは、これからの産業を考える上で大変重要なポイントになります。ニーズとシーズを見つめて、それらに対して受け身ではなく、どのようなプロジェクトで新しい産業を作っていくのかという非常に主体的な関わりがどうしても必要となってきます。そのような発想でこれから何が有望産業なのか、どのような会社に働いたら自分は有利なのかという考え方だけではなく、物語を大きく歴史的な角度で考え直し、ニーズとシーズを見つめる中で、自分の立ち位置について確認していく作業がこれからの時代を見据える上では大変重要になるだろうと思います。 

 
就職を機に世界と人生を考える!BS寺島 月9トーク(BS12 TwellV)
第9回放送(2013年2月25日)より
 
 


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