寺島実郎の世界観 第7回 「地域の活性化と幸福」

2013/05/13

  「就職を機に世界と人生を考える!BS寺島月9トーク」内の「寺島実郎の世界観—今知っておくべきメガトレンド」のコーナーで寺島が語った内容をご紹介します。第7回テーマは「地域の活性化と幸福」です。

 
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 今回は、「地域の活性化と幸福」という話題に触れておきたいと思います。自分の職業を真剣に考える若い学生、さらに若者の中で、UターンやIターンという言葉がよく聞かれるようになりました。つまり、自分の出身県・出身地域に戻り、そこで仕事を見つけて貢献することや、自分の出身県ではなくても地域の活性化のために仕事を見つけ、貢献したいと考える学生が意外なほどに増えてきています。地方自治体も力を入れて取り組んでいますが、地域を支える人材をどのように育てていくのかということは大きな課題になってきています。
 
 私自身が監修する形で一般財団法人日本総合研究所が昨年の12月に『日本でいちばんいい県 都道府県別幸福度ランキング』という本を東洋経済新報社より出版しました。県民幸福度について分析を行った本ですが、これについて今回の話題の参考として触れておきたいと思います。
 ブータンが世界一幸せな国という話題をおそらく耳にしたことはあるかと思いますが、世界においては様々な研究機関が自らの価値観に基づいて、一体世界のどの国に住むのがその国民にとって幸せかどうかという分析を行い、資料を作成しています。例えば、これらの資料からデンマークはどのような分析でもトップに近いところに位置づけられてきていることに気が付きます。その際、食料自給率が高いことなどを重要だとする分析であれば、どうしてもデンマークが世界の幸福度ランキングの上位に顔を出してくるようになります。しかし、問題は誰もが幸福というものは主観的なものだと思っているということです。ではこの主観的な要素をできるだけ取り除き、客観的、合理的に考えて人間の社会生活において幸福に関わるような指標、さらに、しっかりと対比分析できるような指標を取り上げて分析してみようということで、日本では一体どの県に住むことが幸福なのかを私どもが考えた55の指標から作成したものが『日本でいちばんいい県 都道府県別幸福度ランキング』です。
 
参考
「55の指標」とは、県民1人あたりの所得や健康寿命、正規雇用者比率やインターンシップ実施率など若者の雇用に直結する指標も多く含まれています。


 この55の指標の分析の結果については、みなさんにとって若干刺激的な表かもしれません。

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 この表では、ご覧のとおり第1位が長野県、第2位が東京都になっています。そして、実際に幸福であるかは別として、福井県、富山県、石川県などの北陸地方の県がこの幸福度ランキングの上位に来ています。なぜこれら北陸地方の県が上位に来ているのか。例えば55の指標の中には、「持ち家比率」があります。借家に住んでいるのはダメなのかという方もいらっしゃるかと思いますが、やはり自分で自分の持ち家に住み、家族を養って安定した生活ができるというイメージから、持ち家比率が高いということも大切な指標のひとつではないかということで選び出しました。これを含め、生活関連の指標、文化関連の指標、健康関連の指標、教育関連の指標や経済の基本指標などで分析した結果、福井県や富山県、石川県は上位に来ました。これらの指標がよい結果であった県はより向上させ、そして上位でない県も指標中の数字を直視して、向上させる形で関わるというのはどういうことなのかということを考えてみるのも非常に意味のあることではないかと思います。
 
 私は、地域に深く入り込んで、地域を支えれば支えるほど、実はその地域が世界に繋がっているということに必ず気付くだろうと思っています。このことを私は、「グローカリティ」と呼んでいます。地方で働くというのは、昔の価値観では都落ちというイメージがありましたが決してそんなことはなく、それどころか実は地域に深く関わることに社会的にも大きな意味があるということに、我々自身気が付かなければいけない状況になっていると思います。
 
 『日本でいちばんいい県 都道府県別幸福度ランキング』の本の中でも紹介していますが、私が尊敬しているイギリスの哲学者バートランド・ラッセルの幸福に対する考え方を紹介したいと思います。世の中に幸福というものに対する様々な考え方がある中で、彼の視点は参考になると思います。このラッセルの「幸福論」は5つのことから形成されています。1つ目は、食と住の条件がしっかり整っていることだと彼は言っています。2つ目に健康でなければ意味がないと。その通りですね。そして、3つ目は愛情によって支えられてないと幸福とは思えない。4つ目は、仕事の成果、手応え。これが幸福の条件だと言うことも頷けます。そして、最後に彼が言っているのが仲間から尊敬される、友人から敬愛される。いろいろな意見があると思いますが、確かにラッセルがいう5つの要素というものが幸福において大変重要だと私自身思います。
 
   今回は「地域の活性化と幸福」という話題で、地域で働くということを一捻り考えていただきたいと思い、お話ししました。
 
就職を機に世界と人生を考える!BS寺島 月9トーク(BS12 TwellV)
第7回放送(2013年2月11日)より
 
 


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