寺島実郎の世界観 第4回 「シェールガス革命とは何か?」

2013/04/10

「就職を機に世界と人生を考える!BS寺島 月9トーク」内の「寺島実郎の世界観-今、知っておくべきメガトレンド」のコーナーで寺島が語った内容をご紹介します。第4回テーマは、「シェールガス革命とは何か?」です。
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  これから社会に出てエネルギーに関連した仕事に就きたいという人は、世界のエネルギー問題の動向に大変注意を払っていると思います。今、日本のメディアにおける報道では、脱原発で再生可能エネルギー・自然エネルギーを中心にした国を作っていくべきという方向でエネルギー問題が議論されている傾向があります。私自身、長くエネルギー問題に関わってきて、つい最近もアメリカでエネルギー問題の関係者と議論してきたところですが、世界のエネルギー問題の潮流が脱原発、再生可能エネルギーの方向に進んでいるとあまり単純に考えると少しずれがあります。そこで今回は、最近話題になってきている「シェールガス」、「シェールオイル」について理解を深めておきたいと思います。

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 化石燃料の一つに天然ガスがあります。シェールガスのシェールは頁岩(けつがん)という意味ですが、上記の図でいうと、水の底に溜まり固まった土の隙間に埋蔵されている天然ガスがシェールガスです。在来型の天然ガスとは違う新しいタイプの天然ガス、非在来型天然ガスです。実はもう30年、40年も前から頁岩層の中にシェールガスが埋蔵されているという話は知られていました。ところが、回収が技術的に難しいということが障壁になり、回収するのに大変コストがかかるため商業ベースに乗らないということがつい3年前までのエネルギー関係者の中での常識でした。
 ところが、アメリカのベンチャー企業が、大量の水による水圧破砕で水平掘削して行き、隙間のシェールガスガスを回収する技術を確立しました。これにより、約2年前から突然商業ベースに乗り始めたのです。カナダから北米、アメリカ合衆国30州でシェールガスの埋蔵量が確認されブームが起こりました。一昨年の段階でアメリカは、シェールガスの世界最大生産国にのし上がり、天然ガスの形で世の中に出てくるようになりました。


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 大量に出始めると天然ガスの価格がどんどんと下がり始めました。上記のグラフを見ていただくと、2008年まで天然ガスと原油の価格はほぼ相関して動いていたことが分かります。ところが、2008年あたりから大量のシェールガスが発見され、生産が開始されると天然ガスの価格が下がり始めました。2008年まで天然ガスの価格は100万BTU当たり約12ドルでしたが、2012年の4月には遂に2ドルを割りました。11月から12月にかけての動きを見ていると、約3.7ドルまで戻ってきたところです。
 このシェールガスがどれくらいのコストで掘ることができれば採算に乗るのかというFS(フィージビリティスタディ:事業化調査)を行っていますが、低い価格でしか売れないとなると商業ベースに乗らないということで、推進していたプロジェクト担当者が驚いてプロジェクトのブレーキを踏みかけている状況になり始めていたのです。ところが、上記のグラフの原油価格を見ていただくと分かると思いますが、原油価格は高いのです。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で行くと1バーレル当たり100ドルという状況まで現在進んでいます。そうすると、原油に投資した方が商業ベースに乗るということで、北米では投資が天然ガスから原油に向かっています。今、原油がアメリカにとって輸出を支える非常に大きな力になり始めています。アメリカは、原油の輸出を許可しておらず、付加価値を付けて精製したものならば輸出してもいいということになっているため、昨年のアメリカの貿易統計の輸出品目の第1位に石油精製品が躍り出てきました。これは中南米向けのガソリンやディーゼル燃料です。アメリカの輸出の主力品目というと航空機とか機械機器を思い浮かべるはずですが、今やアメリカ経済を支える輸出の柱として原油から石油を精製した石油精製品というのが躍り出てくるように、化石燃料がアメリカの経済を支える柱になってきているのです。

 
 日本は今原発を止めて天然ガスで電気を付けていると言ってもいいと思いますが、日本が今入手している天然ガスの価格は100万BTU当たり17.9ドルです。先程、話題にした約3.7ドルの北米の水準から考えると4~5倍くらいの高いガスを、主に中東やインドネシア、最近ではロシアから輸入して電気を付けています。安いアメリカの天然ガスが輸入できればと誰でも思うはずですが、実はそこにはアメリカ政府の方針があって、FTA(自由貿易協定)対象国を優先するという政策を取っています。韓国とアメリカとの間にはFTAが締結されているため、韓国には2012年の2月に安い天然ガスの輸出を許可しました。ところが日本はまだアメリカとTPP・FTAを締結していないため、その天然ガスの輸出の許可がされていません。遅かれ早かれアメリカは日本に対して安い天然ガスの輸出を許可すると思いますが、実際に物が動くのは3~4年先と予想されることから、日本の化学工業はむしろ北米に生産立地したほうがいいと生産をシフトするような動きさえ見えてきています。

 
 要するに今回は、平板な固定観念で世界のエネルギー動向を見てはいけないということを皆さんに伝えたかったのです。脱原発・再生可能エネルギーで行けば日本のエネルギーはなんとかなるというだけの考え方ではなく、例えば新しいシェールガス・シェールオイルの動きを視界に入れておく必要があります。今、エネルギーの専門家が世界の地政学の軸が中東から米州に移るのではないかというぐらいアメリカはエネルギーの自給構想を持っています。つまり、中東に依存しなくてもアメリカのエネルギー戦略が成り立つという方向に向けて、シェールガス・シェールオイルの事業を持っていこうとしています。要するに世界のエネルギーの流れがものすごい勢いで変わろうとしています。エネルギー問題に興味のある方は多次元的に世界のエネルギー動向に目を向けることが、固定観念から脱却して行く非常に重要なポイントなのです。
 
就職を機に世界と人生を考える!BS寺島 月9トーク(BS12 TwellV)
第4回放送(2013年1月21日)より

 
 


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