世界を知る対談 安藤忠雄 × 寺島実郎

2013/03/22

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  安藤 忠雄 氏

   
建築家


 対談冒頭、寺島は安藤忠雄氏を「存在そのものが日本の誇り」と紹介しました。世界的建築家として、現在ではベネチアの歴史的建造物を美術館に改修する「ブンタ・デラ・ドガーナ再生計画」に携わるなど、常時50以上の仕事に国内外で取り組んでいます。安藤氏と寺島は、次世代の若者が人生と仕事を考える上で心に留めておくべき多くのメッセージを対談に込めました。

 最初に寺島は、安藤氏の原点を探りました。大阪の下町で育ち、中学2年の時に自宅の長屋を改装する熱心な大工に感銘を受けて建築を志しますが、経済的理由から大学進学を断念、アルバイトの傍ら独学で建築を修めました。金も学問もないなら自分の力で生きなければと覚悟を決めた当時を振り返り、ハンデはエネルギーに転化すればよいと力を込めました。

 自分で稼いだお金で22歳の時に日本を、24歳の時に世界を旅しました。常に自立の大切さを説く祖母が、お金は自分の体に貯めなさいと言ったことがひとつの動機でした。旅では日本の美しさを再発見し、世界中に建築の見本を見つけました。そして、人間の創造力は無限であり、その根源は生きる喜びと好奇心であると気付きました。

 出世作「住吉の長屋」や「光の教会」、そして直島の「ベネッセハウス」や「地中美術館」など、話題が安藤建築に及ぶと話は尽きませんでした。例えば安藤氏は、光の教会の設計時、光の十字架で人の心を一つにする目的で施主や信者と徹底的に議論し、お互いの構想力を膨らませたことを紹介しました。寺島は、建築は決して一人の天才によるものではなく、施主をはじめ多くの人と作り上げるものであり、その中で生身で相手に迫り、心を掴んできた安藤氏の人間力と情熱を繰り返し強調しました。さらには、ガウディの話を通じて、建造物は時代の雰囲気や思想、先達の蓄積の反映であり、プロジェクトエンジニアリングの産物であると論じました。
 
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 寺島は、ずっと聞いてみたかったと前置きした上で、安藤氏にライバルを尋ねました。すると、ニューヨークJFK国際空港・TWA(第5)ターミナルのエーロ・サーリネン、ロンシャンの礼拝堂のル・コルビュジエなどを挙げました。そして、今でも他人の作品を見るのが怖い、なぜなら自分には出来ないかもしれないからと本音を語りました。しかし、やはり好奇心から他人の作品を見るのであり、恐れと好奇心の共存こそが正気の証拠であり、いずれかを失ったら直ぐに引退するときっぱり答えました。

 次に安藤氏は、日本海の海洋資源保護を目的とした国際協力の構想を紹介しました。寺島も日本海は重要な国際航路であることなど、その地政学的重要性に触れ、環日本海諸国との協力体制を構築する必要性に言及しました。歩んできた道は異なりますが、安藤氏と寺島は、広い視野から将来に向けた構想を描き、世間に問い続ける姿勢では一致しています。

 そして対談は、現在に生きる若者が話題にのぼりました。東日本大震災後、安藤氏は遺児育英基金「桃・柿育英会」の発起人に名を連ねました。すると、想像以上の寄付の多さに日本人の素晴らしさを再確認したものの、殆どが50歳以上であったとして次世代の若者に対する不安をぬぐえませんでした。安藤氏は、1980年以降に生まれた子供は過保護で役に立たないと常に発言していることは周知の通りです。

 寺島は、この発言を安藤流の叱咤激励と捉え、今の日本は極端に恵まれていることに若者が気付き、その豊かさを活用するならば多くの可能性があると激励し、その一方で、発展途上国では誰も食事を運んでくれないから引きこもりはありえないと、恵まれた環境の中でも自分の人生に責任を持つ厳しさにも言及しました。そして、自分の夢を追求する過程を歩み、これはと思う人物に体当たりするべきと若者に奮起を求めました。

 安藤氏は、対談を通じて自立心が欠如している若者を繰り返し取り上げ、最近は反論する若者が少ないと嘆きました。しかし、安藤氏の叱咤激励には生身で闘う人物の迫力と、次世代を育てようとする責任感が込められています。
 


201303221905_3-170x0.jpg安藤 忠雄 (あんどう ただお)

大阪生まれ。独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。
代表作に「六甲の集合住宅」「光の教会」「FABRICA(ベネトンアートスクール)」「ピューリッツァー美術館」「地中美術館」「表参道ヒルズ(同潤会青山アパート建替計画)」「プンタ・デラ・ドガーナ」等。
79年「住吉の長屋」で日本建築学会賞、85年アルヴァ・アアルト賞、89年フランス建築アカデミーゴールドメダル、93年日本芸術院賞、95年朝日賞、95年プリツカー賞、96年高松宮殿下記念世界文化賞、02年AIAゴールドメダル、京都賞、03年文化功労者、05年UIA(国際建築家連合)ゴールドメダル、レジオンドヌール勲章(シュヴァリエ)、06年環境保全功労者、10年ジョン・F・ケネディセンター芸術金賞、後藤新平賞、文化勲章、12年リチャード・ノイトラ賞。11年「桃・柿育英会 東日本大震災遺児育英資金」実行委員長。イェール、コロンビア、ハーバード大学の客員教授歴任。97年より東京大学教授、03年より名誉教授。著書に『建築を語る』『連戦連敗』『仕事をつくる』等。

 
就職を機に世界と人生を考える!BS寺島 月9トーク(BS12 TwellV)
第3回放送(2013年1月14日)、第4回放送(1月21日)より

 


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