第6回 未来挑戦型企業クローズアップ



未来挑戦型企業クローズアップ第6回目のゲストは、一級建築士事務所の株式会社スタイレックス創業者、黒田豊代表取締役社長です。本インタビューでは、建築設計業界の仕事の魅力と難しさ、さらには就職を控えた若者に対するメッセージを、ご自身の経験からお話しくださいました。
 
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株式会社スタイレックスはこんな会社です
建築士は、建築主(施主)の希望に応じ、法律や耐震構造、防災等さまざまな条件を考慮に入れて、建物設計図を作成し、建築物の完成に向けて施工業者の管理・指導を担います。
黒田氏が平成17(2005)年に創業した株式会社スタイレックスは、一級建築士事務所です。特に大型マンションの設計を得意としており、住宅本来の役割を大切にしつつ、新たな価値を付加するデザインに定評があります。
【開 設】 2005年4月
【所 員】 19名(2013年5月
【所在地】 東京都新宿区
【業務内容】 建築計画コンサルティング、建築デザインコンサルティング、
       建築設計・監理
【ウェブサイト】 http://www.style-complex.com/



〇創業直後の試練
  
創業から8年目となるスタイレックス社のこれまでの歩みをお話し下さい。
 
201310231837_1-249x160.jpg会社創業
 かつて私は新宿の建築設計事務所に勤めていました。在籍スタッフは70~80名と、この業界では中堅以上の規模でした。私は営業担当として、新規開拓や顧客訪問を行っていました。
 しかし、経験を重ねていくにつれ、本当に自分の向かいたい方向が見えてきました。その実現には独立すべきとの気持ちが次第に強くなり、平成17(2005)年4月、渋谷の小さいビルの一室を拠点として、6人で弊社を設立しました。その当初、すでに数件の仕事を頂ける状況でしたので、これらに真剣に取り組み、次の仕事に繋げていこうと夢を抱いてスタートしました。
 

構造計算書偽装問題
 しかし、会社設立から半年後、世間を騒がせた「構造計算書偽装問題」が発生しました。この事件により、世間は建築設計業界に厳しい眼差しを向けることになりました。同じ業界の私達も、会社設立の熱い気持ちに冷や水を掛けられた思いがしました。
 
 「構造計算書偽装問題」(耐震偽装問題)
ある一級建築士が建築物の構造計算書を偽装した事件。2005年11月に発覚後、耐震基準を満たさない新築マンションやホテルが次々と建て替えを余儀なくされた。メディアや国会は連日この問題を取り上げ、大きな社会問題となった。 

 この時、監督官庁の国土交通省や各関係機関が、偽装の再発防止に向け、建築基準法の改正や検査の在り方を見直し始めました。この間、設計図書の審査機関が止まってしまい、私達の仕事も大きな打撃を受けました。なぜなら設計図を作成しても、審査していただけないからです。
 設計図が審査されない以上、工事に着手できず、建築主様は非常に困りました。私達も、設計図の作成費用を請求できなくなりました。しかし、作成にかかった経費は支払わなければなりません。この時は、本当に倒産を覚悟しました。金融機関を駆けずり回り、応援して頂ける先輩経営者達を頼ることでなんとかこの危機を乗り越えることができましたが、今から振り返ると、この経験があったおかげで精神的に強くなれたのかな、と思っております。
 

リーマン・ショック
 耐震偽装問題が弊社を襲った外的要因の第1波とすると、第2波は平成20(2008)年9月の「リーマン・ショック」でした。
 
「リーマン・ショック」
アメリカを代表する投資銀行グループ・リーマンブラザーズが2008年9月に破綻すると、他の金融機関も連鎖的に経営危機に陥った。その影響は世界中に波及し、世界同時不況の大きな引き金となった。

 リーマン・ショック以前は、外資系ファンドが日本の不動産投資に積極進出しており、用地確保が困難となり、またマンションデベロッパー(開発業者)が分譲マンションに加えてビルも購入し、ファンドに転売する例も見られました。つまり不動産業界はミニバブル状態であり、弊社にもそれなりの仕事がまわってきました。
 しかし、リーマン・ショックによって状況は一変しました。多くのデベロッパーが事業を取りやめ、その煽りを受けた弊社は、既に制作中の設計図のキャンセルを言い渡されるなど、多くの仕事が中断してしまいました。
この時点で精算できればいいですが、倒産する取引先もあり、未収金が続出しました。この当時、弊社には25名程度所属しており、会社の維持経費も最大の時期でした。  この時の危機は、全役員は必要最小限の生活費で我慢してもらい、全従業員とはひとりひとり時間をかけて話をし、給与を一定割合減給させてもらったり、外注取引先とも交渉して支払を分割してもらったり、支出を抑えることで、できることは全てやったつもりです。
 同時にこれまでの最大顧客である、マンションディベロッパー以外の設計受注を必死に獲得すべく営業方針も変更し、商業ビルや個人オーナーのテナントビル、結婚式場などの計画を受注し、なんとかこの難局を凌くことができました。
 


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