第5回 未来挑戦型企業クローズアップ


  未来挑戦型企業クローズアップ5回目のゲストは、カメラレンズに代表される光学技術をはじめ、機械・電子技術を基盤とするオプトメカトロニクスの総合光学メーカー、株式会社トヨテックの小野喜明 代表取締役社長です。
  経営理念や海外展開の実情、本社がある愛知県豊川市への想いについてお話いただきました。また、ご自身の体験を踏まえ、学生に向けたメッセージもいただきました。

 
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創業時から受け継がれた志や経営理念についてお聞かせください。
 
 弊社の前身は、祖父・小野武喜が昭和19(1944)年に長野県で設立した大和光学工業(株)です。昭和35(1960)年、祖父の業務の一部を受け継いだ父は、工場を長野県から愛知県に移転して弊社を創立しました。私は昭和32年生まれであるので当時の事はよく分かりませんが、非常に貧しく、飲まず食わずの中での創業であったと聞いております。そのため、創業時に高邁な理念を掲げるゆとりはなかったと思います。
 
 昭和45(1970)年、グループ会社8社で「トーヨーサークル」という企業集団を形成しました。この時、グループ企業を結束させるための共通理念が必要となり、「相互信頼・相互協力・相互繁栄」と社是を定めました。会社は人で成り立ち、仕事は人が行うものですので、何よりも信頼と協力が大切です。この価値観をグループ企業が共有することを目指したのです。
 
 トヨテック創業者の父は、経営の基軸に人間愛を据えました。そして、建前ではなく、真に全員参加型の経営を目指しました。たとえば最も会社が多い時期には15社、工場も20を数えたグループの各拠点では、タイムカードの廃止を実践するなど社員が積極的に自主管理・自主経営に携わってきました。弊社の理念は、こうしたところに表れていると考えております。
 
 弊社の事業は、光学部品・光学レンズの設計製造が中心です。例えばレンズでは、全カメラメーカーとの取引があります。しかし私たちは、販売するのは製品ではなく、製品に凝縮される技術であると考えています。もちろん技術の進歩は著しく早いので、常に研究開発を重ねているところです。
 
 光学技術は、電気、製造、化学など実に幅広い技術要素で成り立っています。また弊社のお客様は、カメラ、複写機、バーコード、DVDプレーヤー、産業機器など、7市場に及んでいます。この分野では日本製品が世界シェアの多くを占めているため、弊社もグローバル競争の渦中にいます。これらの市場に対して、私たちはいわゆるニッチでのトップを目指しています。例えばバーコード部品の中では、世界シェアで80%、90%を占める弊社製品がいくつかあります。
 
 海外で勝ち抜くには、お客様との協業体制を武器としなくてはなりません。社是の「相互信頼・相互協力・相互繁栄」は、お客様との関係においてこそ目指すべき理念です。そこで弊社は、お客様に対する提案事業にも力を注いでいます。お客様が得意でない技術や製造方法を私たちが補完し、お互いの能力や技術を組み合わせる「協業戦略」を推進しています。
 
 
グローバル事業展開を推進する上でのご経験をお聞かせください。
 
201304081556_1-300x0.jpg 当社の仕事は、製造コストの問題があります。そこで、18年前の1994年、コスト削減を目的に香港に進出しました。その8年後の2002年には中国・広東省に自社工場を設立し、ちょうど昨年で10年目を迎えました。
 
 そして、今では中国が生産活動の中心となり、日本国内の生産は3割程度になりました。代わりに日本では、開発・設計・営業、そしてお客様に対する技術提案を積極的に行っています。日本と中国でこうした役割分担をしているのです。
 
 一般的に中国でのビジネスは、労務関係等のトラブルをはじめ、非常に難しいと言われています。しかし、私たちはトラブルとほぼ無縁でやってきました。その理由として考えられるのは、中国人との信頼関係の構築に力を注いだからでしょう。もちろん私1人や役員のみの功績ではありません。多くの社員が何度も中国に出張や駐在して、10年間をかけて信頼関係を築き上げてきた成果です。
 
 韓国とも長い歴史があります。しかし韓国市場はサムソンやLG電子の存在もあり、日本企業の参入は厳しいのが現状です。そこで私たちは、信頼の置ける韓国人パートナーに韓国市場を任せるべきと判断しました。2011年、10数年に及ぶ取引がある韓国企業の幹部が独立したのを機に、弊社は資本・業務提携を結びました。
 
 さらにチャイナプラスワンに関しては、弊社のお客様も進出しているベトナム、タイ、インドネシアなどを候補に検討しております。


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