第4回 未来挑戦型企業クローズアップ

 
 未来挑戦型企業クローズアップ4回目のゲストは、明治34(1901)年に広島駅構内の弁当事業からスタートし、現在では食に関する先進的・多角的な事業を展開している広島駅弁当株式会社 の中島和雄代表取締役社長です。インタビューでは、経営理念や今後の事業展開、そして就職ミスマッチの原因や解決策についてお話いただきました。また、インタビューに同席した学生からの質問にもお答えいただきました。
 
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創業から長い歴史をお持ちの御社のこれまでの歩みについてお聞かせください。

 当社は、今年で創業112年目になります。社名のとおり、当初は広島の鉄道を舞台に事業を展開して参りました。平成6(1994)年の第12回アジア競技大会の際には、弁当公式サプライヤーとして給食設備を備えた新社屋を建てました。しかし、その翌年に阪神淡路大震災が発生し、広島の鉄道も打撃を受け、当社も窮地に陥りました。既に震災前から日本経済が縮小傾向にあったこともあり、赤字が連続しました。私が社長に就任した平成11(1999)年には、当社はまさに破綻状態にありました。会社再建の任を受けるに当たっては随分悩みましたが、その時当社は創業99年目を迎えており、「100年まで頑張れ」との応援を頂き、丁度50歳を迎えていた私は、これも「天命」と思い決断しました。
 
 
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 この時、過去の経営を振り返りつつ、今後の展開を考えました。そして、当社の主力商品であった駅弁、お花見や法事の弁当に加えて、新たに日常的に食べていただける商品を考案しました。なぜなら、駅弁や催事の弁当を食べるのは年に数回ですが、人は1日3回、365日で1,095回もの食事をします。つまりマーケットの規模は日常の食卓の方がはるかに大きいのです。そこで、家庭用の惣菜や弁当をスーパーに置かせていただきました。1年後、駅弁の売上げは前年比で3億円減少しましたが、食卓市場からは3億円もの新規売上を得ることができ、お蔭様で、なんとかこの危機を乗り越えることができました。
 

 この間、当社の弱点は過剰設備にあると痛感し、稼働率の向上を目指しました。その方法を考えている時、偶然にもアメリカ海兵隊の給食設備を紹介する本と出会いました。そこには、セントラル・キッチン(CK)とサテライト・キッチン(SK)の仕組みが説明されていました。食産業の高度化を先取りしたこの仕組みを学んだことで、当社もCKとSKの導入を目指しました。具体的には、本社工場をCK化して下ごしらえや半加工調理を行い、その後SKに輸送して、お客様に提供するための最終調理を行うのです。このシステムは、当社懸案の稼働率改善に役立つと直感しました。同時に、設備・機械の高度化も図りました。プロの調理人は、長年の経験と勘で様々な調理を行いますが、再現性のある高度な調理器具があるならば、ある程度の訓練を得た誰もが同じ品質の調理を安定して行うことが出来ます。

 このCKとSKのシステム導入期に、地元のある地方銀行様の社員食堂を担当させていただく機会を得ました。ちょうどその銀行様が、業績V字回復の一環として食事補助費の削減を検討中であり、当社に機会を与えて下さったのです。1年後、当社は赤字を出しましたが、その赤字分の家賃を割引していただくということもありました。この社員食堂の経験を各方面にご案内させていただくと、広島の大手企業を始めとして実に多くの会社さまからオファーをいただくに至りました。こうして高度化対応したローコストオペレーションのCKとSKのシステムを軌道に乗せることができました。倒産危機に陥って、困った挙句に偶然見つけた解決策でした。偶然から「意図せざるイノベーション」が生まれたのです。
 


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